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すごい昼食会

趣  旨:当研究室の学生が最近「すごい」と思ったことを野依先生と共有•議論することで,

     知識を深め,視野を広げる.

スタイル:月1~2回,野依先生と昼食をとりながら 1-2時間,議論します.

 

2018 (第17回–) はこちら

 

第16回(2017年11月17日 12:00-14:00)

発表者:神田(M2) 「東京オリンピックの経済効果がすごい」

座長:永田(M2),参加者:吉岡(M2),小林(M1),奈良岡(B4)

概要:2020年に東京で第32回オリンピック競技大会が開催されます.大会開催がもたらす経済効果には

   直接効果 (会場整備費,大会運営費、観戦者の支出) と付随効果 (交通インフラ整備,バリアフリー

   対策) があり,それらの総計は32兆円にもなると見積もられています.この話題を神田君が紹介し,

   以下について議論しました:

  1.今回のオリンピックが日本に与える影響は何か.オリンピックで利益をどのように生み出すか.

  2.“化学の力”を生かしてどのようにオリンピック,スポーツに貢献できるか.新しいアイディアは

    異なる専門の人と議論を重ねることで生まれる.

  3.多言語自動翻訳の問題.自動翻訳は便利であるため普及し,日本語のあり方も変わるだろう.

     外国企業が開発した自動翻訳しか使えなければ外国語に翻訳しやすい日本語しか残らなくなる

     かもしれない.日本語を母国語とする人たちが自動翻訳技術を先導して,自分たちで新しい日本語

     をつくる必要があるのではないか.

 

  参考: 日本経済新聞 2017/3/7 東京五輪の経済効果、全国で32兆円 都が30年まで試算

 

第15回(2017年10月19日 12:00-14:00)

発表者:森(M1) 「セイラー教授(行動経済学)がすごい」

座長:鎌田(M1). 参加者:岡部(M2), 神田(M2), 大桑(B4)

概要: 今年のノーベル経済学賞は, 行動経済学に関する研究を行ったセイラー教授(シカゴ大学)が受賞しま

  した.セイラー教授の研究に「明日はもっと貯蓄しよう政策」というものがあります.これは心理学

  を利用して人の貯蓄を促す政策であり,アメリカの確定拠出年金制度に取り入れられています.

  この話題を森さんが提供し. 以下の点について議論しました:

  1.貯金に資金が流れると,経済活動を回すための資金が足りなくなるのではないか

  2.人の幸せはどこにあるか.お金持ち=幸せな人,とは限らない.

  3.労働と仕事はどう違うか.労働は強制的な側面が強く, 仕事は自発的な側面が強い.

  4.現代日本社会では何が問題か.お年寄りの意見が反映されやすい選挙,失敗した人が再挑戦する

     仕組みが少ないことなど.

  5.異分野であろうと,自分が興味を持った分野に挑戦することが大事である.高校を出てから

     専門的な内容を勉強した時間は一生の中でほんのわずかである.失敗を恐れず自分が興味を

     もった分野に挑戦しよう.

 

第 14 回 (2017 年 9 月 28 日 12:00-14:00)

発表者:坂野 (M1) 「部活がすごい」

座長:鎌田 (M1),参加者:多田 (B4), 森 (M1)

概要:日本の中学•高校の部活動は世界的にも独特で,学校中心で運営される,一年を通して活動が活発

  である,生徒に対する経済的な負担が少ない,などが特色です.欧米諸国では部活動に相当する

  活動が地域で運営されていたり,またシーズン制であるなど,その様子は日本と大きく異なります.

  この話題を坂野さんが提供し,以下の点について議論しました:

  1. そもそも部活動は誰のために,何のために,あるのか?

  2. どの国のシステムでも部活動の質を高めることが大事である.

  3. 部活動と学習はトレードオフの関係にはない.部活動で活躍できる人に勉強ができる人も多い.

   相乗効果をもたらす仕組み,バランスが大事である.

  4. 同質のメンバーから自然発生的に生じる「グループ」と,目的をもって異質のメンバーが集まる

   「チーム」は違う.問題解決や,勝つためにはチームを作ることが大事.日本人はグループを作る

   のは得意だが,チームを作るのが苦手か?

  5. 部活動にも多様性があってよいのではないか.例えば,グループとしてやっていくサッカー部と,

     チームとしてやっていくサッカー部など.

  6. 日本の部活動ではいじめや教員への負担などの問題点が指摘され,学校と部活動は切り離すべき

   という意見もあるが,工夫すれば今の仕組みの良い点を残しつつ問題解決できるのではないか.

 

第 13 回 (2017 年 8 月 10 日 12:00-14:00)

発表者:小川 (M2) 「インスタグラムがすごい」

座長:永田 (M2),参加者:齋藤 (M1), 岡部 (M2)

概要:インスタグラムは,他人に写真を手軽に発信できるツールとして人気を集めています.その人気の

   高さから,大きな宣伝効果ももたらします.例えば 2016 年の犬山城(愛知県犬山市)の来場客数は

  2003 年の約3倍に増加しましたが,この背景には犬山観光協会が「撮りたくなる」商品を開発するこ

  とで,若者のインスタグラムへの投稿を促したことが大きいとされています.この話題を小川さんが

  紹介し,以下について議論しました.

  1. SNS によって creativity が奪われているのではないか

  2. 情報があふれる世の中で情報の取捨選択はとても重要であること

  3. 現在,大学で行なわれている研究においても,テーマ決定の段階で creativity が足りないのでは

   ないか,同じようなことを皆でやっていても仕方がない

  4. Creativity を奪ってしまう教育制度について,分野の細分化による悪影響

 

 

第 12 回 (2017 年 5 月 11 日 12:00-14:00)

発表者:鎌田 (M1) 「糖質制限がすごい」

座長:吉岡 (M2),参加者:小林 (M1), 大桑 (B4), 奈良岡 (B4)

概要:「糖質オフ」「糖質ゼロ」などをうたい文句にした商品が最近よく販売されています.

   富士経済の調査結果によると糖質オフ•ゼロにかかわる国内食品市場規模は 2015 年に

   3000 億円を突破しています.この話題を鎌田君が紹介し,以下について議論しました:

   1.糖質オフ•ゼロ食品にかかわる情報にどれほど科学的な根拠があるか.

   2.糖質オフ•ゼロの流行がどのような生物学的,経済的,社会的効果をもたらすか.

   3.ライフサイエンスは「生命の科学」と「生活の科学」からなるが,生活科学にも

      発展の余地がある.生活と結びついた科学にも人の暮らしをより良く変える力がある.

   4.「虚構」を人が信じることで社会は形成され,虚構が崩れた時その社会は崩壊する.

      虚構が虚構であることを意識して議論することが大事ではないか.

 

第 11 回 (2016 年 12 月 16 日 12:00-14:00)

発表者•座長:岩月 (M2) "面白い純粋化学のテーマとは"

参加者:神田 (M1), 森 (B4)

概要:化学は理学系の他の学問より応用に偏っているようにみえる.産業に関係の無い,純粋に

   化学として重要な問題,面白い問題は何かという問いかけを野依先生からいただき,

   岩月君が純粋数学との対比で化学のあり方について持論を展開しました.特に,テーマを

   設定する原動力(好奇心)とは何か,役に立つ,とは何か,また誰にとって役に立つかで

   必ずしも役に立つものが良い効果をもたらすわけではない,分野の細分化による悪影響

   などついて議論しました.

 

第十回 (2016 年 10 月 17 日 12:00-14:00)

発表者:Wang (D3) "Acupuncture/Molecular Machines"

座長:岩月(M2),参加者:高田 (D3), Neumann (M2)

概要:鍼治療 (Acupuncture) の最先端科学と2016年ノーベル化学賞 (受賞対象:分子機械の設計と合成)

   https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2016/

   について以下の点を議論しました:

  1.鍼治療を科学的に研究するために最も適したモデルは何か.

  2.単純化する西洋医学的な考え方よりも,複雑なものをそのまま使う東洋医学的な考え方の方が

    大事な発見につながる可能性もある.

  3.今年 2016 年のノーベル化学賞の受賞対象となった業績は純粋科学や基礎科学的な側面が強く,

    現時点では人々の暮らしの役に立っている研究ではない.

    [ ここでは純粋科学 (Pure Science)は応用を指向しない純粋な興味によって進める科学,

    基礎科学 (Basic Science) とは応用を見据えつつも基礎的な段階にある科学を指します]

    すぐ「役に立つ」化学研究を推奨する昨今の風潮に対するアンチテーゼか.

  4.科学による人類のための貢献とは何か.

  5.化学は理学系の他の学問より応用に偏っているようにみえる.産業に関係の無い,純粋に

    科学として重要な問題,面白い問題は何か(宿題,次回のテーマ)

 

第九回 (2016 年 9 月 16 日 12:00-14:00)

発表者:鳴戸 (D3) "Rapid Evolution in Nature"

座長:岩月(M2),参加者:Sawant (Postdoc), Wang (D2)

概要:タスマニアデビルが感染性のガン流行(デビル顔面腫瘍性疾患)に対して急激な進化を遂げたこと

   についての論文 (B. Epstein et al., Nat. Commun. 2016,7, 12684.) を鳴戸君が紹介し,生命の進化

   の魅力とリスクに触れた上で以下の点について議論しました:

  1.生態系の複雑さ:人間にとって「有害な」生き物だと決めつけて駆除した時に「有益な」生き物

   たちに何が起こるか,予想するのは難しい.蚊やダニ,農作物を荒らす野生生物など,人類に害を

   なすとされる生き物も複雑な生態系に組み込まれている.たとえば狼を絶滅させれば,狼が住んで

   いた山に住む多くの生き物が生きていけなくなる.

  2.タスマニアデビルのデビル顔面腫瘍性疾患のように,ヒトからヒトへと癌細胞自体が感染する癌

   は起こりうるのか.

   また参加者の Sawant さん(インド出身),Wang 君 (中国出身) の話がきっかけで,以下の点も

   議論しました(写真は Sawant さんと,同氏の奥様が作ってくれた料理):

  3.日本,インド,中国のそれぞれが異なった複雑な社会問題を抱えている,

  4.国境を超え若者同士が協力して問題解決にあたるためにはどうすればよいか.

  5.日本の若者がインドを知ることが重要(在日インド人と話をする,実際にインドを訪れる).

 

第八回 (2016 年 8 月 10 日 12:00-13:00)

発表者:岡部 (M1)「陸上競技がすごい」

座長:岩月(M2),参加者:鳴戸(D3), 青木(M2)

概要:本学陸上競技部の岡部くんが陸上競技,特に競歩の魅力と選手に対する報酬や支援について

   話題提供し,以下の点について議論しました:

   1.日本と米国のトップアスリートに対する報酬や支援には格差があるのはなぜか.

   2.プロ vs アマ:プロ選手はスポンサーがつき,恵まれた環境で競技に専念できる.

     競技がプロ化するとその競技のレベルは全体的に向上する.スポンサーは民間企業で

     あったり,国家であったり,事情は国によって様々である.

      一方でアマチュア選手は仕事と両立する必要があり,環境面での支援も限られている.

     しかしお金が絡まなければドーピングや八百長などは生じにくく,より健全ともいえる.

     またアマチュアは競技生活と並行して働くスキルを培っているため,競技引退後も

     労働継続が容易で将来の経済的懸念はプロより少ないか.

   3.競技生活や環境に対する投資にはスポンサーの意図がある.例えば試合にはショーとしての

     側面があり,選手が活躍すれば広告効果となって商品の売り上げが伸びる.

     スポンサーは選手の立場に寄り添って,心から選手の活躍を願ってくれているだろうか.

     またスポンサーの活動は,全体として競技全体の発展や広く社会の利益に貢献するだろうか.

   4.何のために,どのように評価するのか,また何に対してどのような報酬を支払うのか

     をよく考えることが重要である.これは陸上競技に限らず学生や社会人も同様である.

 

第七回 (2016 年 7 月 13 日 12:00-14:00)

発表者:村木 (M2)「犬の癒し効果がすごい」

座長:青木(M2),参加者:森岡(D2), 小川(M1)

概要:村木さんは帰宅すると愛犬のラブラドールレトリバーにいつも癒されているそうです.また最近

   飼い主と飼い犬との愛着形成に,ヒト母子間でみられるオキシトシンと視線を介した正のループが

   存在することも報告されました [M. Nagasawa et al., Science, 348, 333 (2015).].今回は飼い犬に

   まつわる話題を村木さんが紹介し,以下の点について議論しました:

   1.飼い犬はどのようにして飼い主を幸せにし,飼い主にどのような影響を与えるのか.

   2.なぜ犬なのか.恋人,家族,他種ペット,ペットロボットとの類似点や相違点は何か.

   3.犬をペットとして飼う文化はどのような影響を現代社会にもたらしているか.家族のあり方,

     飼い主以外の人たちの生活,少子高齢化や晩婚化,世界的な人口爆発への影響は.

   4.イヌはいつ,どのようにヒトの社会に入ってきたのか.「飼い犬に癒される」社会の特徴は何

     か.今後ヒトとイヌはどのような関係を築いていくのか.

 

第六回 (2016 年 6 月 6 日 12:00-14:00)

発表者:永田 (M1)「和紙がすごい」

座長:鳴戸(D3),参加者:坂野(B4), 鎌田(B4)

概要:土佐典具帖紙(てんぐじょうし,重要無形文化財)はカゲロウの羽と称されるほど薄く,かつ

   高い耐水性,保湿性をもつ和紙の製作技術です.これらの特徴をいかして最近では白く透明な

   典具帖紙が開発され文化財の修復に用いられるなど,新たな市場も生み出されています.こう

   した和紙の伝統工芸技術にまつわる話題を永田さんが提供し,以下の点について議論しました:

   1.文化は地域や個人に帰属する.一方で生活に影響を及ぼすほどの量的供給では文明(現代の

     科学技術)に分があり,多くの伝統的な手法や商品は規格化された工業的大量生産によって

     代替されている.このような背景の中で有形文化をいかに継承し発展させればよいか.

     また文化の継承に現代の人は当事者としてどこまで賛同できるか.

   2.伝統文化や匠の技からどのようにして新しい価値や市場を再発見できるか.どのようにして

     社会に,世界にインパクトをもたらすことができるか.

   3.優れた伝統工芸や熟練技術はどれだけ化学的に理解されているか.

   4.産官学の協力では不十分.民(生活者)も賛同しないと物事はうまく進まない.

   5.世の中は「良いもの」を求めており,オリジナリティーは必ずしも要求していない.

 

第五回 (2016年5 月27日 12:00-14:00)

発表者:岩月 (M2)「仮想現実 (VR) 技術 がすごい」

座長:吉岡(M1),参加者:高田(D3), 岡部(M1)

概要:今年2016年は仮想現実 (Virtual Reality, VR) 元年,と言われるように VR 技術を搭載した商品が

   続々とリリースされています.今回は岩月君の VR 技術の発展と商用化についての話題提供

   をもとに,以下の点について議論しました:

   1.近い将来 VR 技術の進展とインフラ化によって暮らしや社会,産業,医療がどう変わるのか.

     (VR が人工知能, ロボット,インターネットと融合すると何ができるようになるのか)

   2.VR 産業やVRの浸透によって起こる社会的変化に化学はどのような貢献ができるか.

   3.高度に発展したVR 技術の頻繁な利用は人体にどのような負の影響を与えうるか.

     (仮想と現実の区別ができなくなったときに何が起こるのか)

   4.VR 技術の進展がもたらしうる課題に対して,どのような法整備や倫理教育,新技術が必要か.

 

第四回 (4 月28日 12:00-14:00)

発表者:吉岡 (M1)「人工知能 (AI) がすごい」

座長:鳴戸(D3),参加者:小川(M1), 神田(M1)

概要:人工知能 (AI) について最近の進展と,問題となっている法整備および倫理 (ELSI)について

   その重要性を議論しました.また AI の発展を適切に受け止め,AI と共存すること,

   AI によって奪われる職業,重要な判断を AI に委ねようとする誘惑にどう対処するか,

   善悪の概念と AI を使用すべき範囲,人間らしく生きるために人間自身がしっかりする

   必要があることなどに言及しました.

 

回 (3月18日 12:00-13:00)

発表者:青木 (M1)「日本の老舗企業がすごい」

座長:高田(D2),参加者:鳴戸( D2), 吉岡(B4)

概要:日本の老舗企業について,その現状 (創廃業率が小さい,会社の少子高齢化) や,

   強みと欠点(高い安定性と低いダイナミズム,心があるか)

   今後の課題(自立と自己改革の必要性,社会に合わせて適応するのではなく

   新しい社会を起こす事業の可能性) について議論を交わしました.

 

第二回 (2 月22日 12:00-13:00)

発表者:赤尾 (M2)「ミャンマーがすごい」

座長:高田(D2),参加者:永田(B4), 吉岡(B4)

         

概要:赤尾くんが昨年訪れたミャンマーの話をきっかけに,新しい法律と政治,

   宗教,ICT の相互関係や今後のあり方について議論を交わしました.

 

第一回 (2 月10日 12:00-14:00)

発表者:高田 (D2)「米国の博物館がすごい」

座長:青木(M1),参加者:村木(M1), 岩月(M1)

         

概要:高田くんが訪れた米国スミソニアン博物館などの話をきっかけに,文化の保存に

   対する国ごとの考え方,科学の立場からのアプローチ,展示と所有の違い,

   記録媒体としての静的な石,現在主流の脆いプラスチックでの情報保存の限界,

   柔軟でダイナミックに遺伝情報をつないでいく生命の可能性

   などについて議論を交わしました.

結論:「石と人間は両極にある」

 

文責:中

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