主な研究内容|RESEARCH
新触媒で未来をつくる
化学の魅力は分子レベルで自然を理解し,その知見をもとに新しい価値を創造できることにあります.私たちはこれまでに分子性の触媒を考え出すことで多彩な化学反応を実現し,現代の合成化学の基礎を確立しました.
現在は新しい触媒プロセスの創出を通して持続可能な社会の基礎となる合成化学の開拓に挑戦しています.エネルギー•資源や環境,ヘルスケアなどで人類が直面している課題の解決に貢献するアイデアと基盤的技術を生み出すこと ––– これが私たちの目標です.
より具体的には,以下の 3 つの研究を連動させながら進めています.
1. 脱石油化学
現在の石油化学を中心とした物質生産では,酸化反応を含むプロセスにより有用物質を生産しています.なぜなら石油や天然ガスは飽和炭化水素からなるため医薬品や高分子材料などの有用物質と比較して還元された状態にあるからです.一方でバイオマスや二酸化炭素などの炭素資源はより高い酸化状態にあります.これらの再生可能な資源を利用するには酸化とは逆の還元反応を使って有用物質をつくる必要があります.
私たちは再生可能な資源を還元して物質を生産するための新しい化学を展開します.再生可能資源から有用物質を理想的な形で産み出すための科学概念を生み出すことで従来と相補的な物質生産体系の確立に貢献します.
2. 触媒をつくる
水素や水,二酸化炭素を物質合成に使うには活性と選択性が高く,頑健な触媒が必要です.私たちはこうした優れた機能をもつ触媒をデザインし,経済的かつ環境にやさしい物質合成法を提供します.また,最近は効率的な化学開発に貢献できるような機械学習モデルの開発にも取り組んでいます.
3. 光をつかう
光エネルギーの利用は,再生可能資源を原料とした物質合成の要です.最近私たちは分子触媒の化学と半導体光触媒の化学を融合して,これまでの常識をくつがえす有機合成反応を実現しました.本研究の究極のゴールは太陽光と水と空気を利用したエネルギー生産型の合成,すなわち人工光合成です.
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野依 良治 – 国立科学博物館ノーベル賞の業績,JST-ERATO 野依分子触媒プロジェクト