EVENTS

すごい昼食会

趣  旨:当研究室の学生が最近「すごい」と思ったことを野依先生と共有•議論することで,

     知識を深め,視野を広げる.

スタイル:野依先生と昼食をとりながら 1-2時間,議論します.

 

第25回(2019年11月29日 12:00–14:00)

発表者:若林(M1)「グレタ•トゥーンベリがすごい」

座長:奈良岡 参加者:森,水野,田村,寺本,Kozinskaya, Chavan

概要:グレタ・トゥーンベリ(Greta Ernman Thunberg)さんは現在16歳のスウェーデンの環境活動家です.2018年8月に「気候のための学校ストライキ」を掲げ,より強い気候変動対策を呼び掛けたことで注目を集めました.同年,国連の温暖化対策サミットで各国代表に対して,気候変動の危機に立ち向かうためすぐさま行動するよう怒りの演説を行ったことでも知られています.今回はトゥーンベリさんも主張する地球温暖化問題に関して,経済や思想の観点を交えてその効果的な解決策を議論しました.

主な議論点:

1. 科学的観点から温暖化問題は喫緊の課題である.

2. 経済活動と温暖化対策はトレードオフの関係にある.

3. 温暖化対策を進めるためには人々の意識改革が必要である.

4. 以上を全て満足する実現可能性の高い手段を実行する必要がある.

 

学生からのコメント

「日本人は社会問題に対しての無関心が目立つが、それは諸問題に対する無知が原因の一つであると思う。このような問題の解決には賛成だが、無知ゆえにその解決策や意見が浮かばない、という人も多いと考えられる。よって、先生方のご意見にもあったように、教育は非常に重要な意識改革の一つであると感じた。政府が計画する大規模なCO2削減策を我々一市民が実行することはできないが、意識改革に基づく小さな前進の積み重ねであれば我々でも行動に移せる。その点において、教育によって地球環境問題への意識を強めることは問題解決の重要な糸口であると思う。」

「一般的な人は、正しくないと分かっていることでも自分から声を上げることは敬遠します。それは、理想的であり皆が幸せになる行動かもしれないが、自分は声を上げることによって大きな損害を受けるかもしれないと考えてしまうからです。私は、今回の議論の中で、ガンジーの「世界に変化を求めるならばまず自分がその変化となれ」という言葉を思い出しました。これはとても勇気の必要な行動だと思います。それを16歳のトゥーンベリさんは成し遂げたのだと考えるととても偉大だと思います。彼女のように、自分のことではなく“他者に対する想い”をもつ人が増えていくことを期待したいと思います。」

「日本は環境問題についてまだまだ後進国ですが、国際的には環境問題が政治的な大きな問題になっています。その中で、無知な人々が扇動を受け、恐怖的な予測をする科学を新興宗教と思っても致し方ないのかなと思いました。そのような人々に科学は決して敵ではなく味方であり、科学でしか解決できないことがたくさんあるということを理解してもらいたいと強く思いました。なぜなら、野依先生がおっしゃったように科学には国境はありませんし、環境問題に対処する力が科学にはあると信じているからです。」

「若林くんの意見は、みんなが意識をして自主的に行動を起こすことが必要という話だった。しかし、僕は人は主流に流される生き物だと思うので、「○○するのがあたりまえ」という空気を作る方が効果的だと思う。政策として多少強引な命令を出しても、最初は批判があるかもしれないが、いつかはみんな慣れてあたりまえになると思う。明らかに正しいことに関しては強引な政策に出てもいいと思う。」

「温暖化問題は現在特に議論されている差し迫ったものですが、野依先生のおっしゃる通り、いろいろな人の様々な思惑・損得、そして実現可能性が入り混じった複雑な問題であることが身に染みてわかりました。しかしながら、いずれは解決しなければいけないこと、そしてその期限はもうすぐそこまで来ていることから、難しいからと言って放置しておける問題でもないことも感じました。今後はより深い関心を持って環境問題に向き合い、また日本国内だけではなく海外の動向にも注意を向けるようにします。」

「環境問題については、意識改革は必要だと思いますが、ペットボトルを洗うときにお湯を使ってはだめ、といっても冬は寒いからお湯を使いたいと思うのが、人々の本音だと思ったので、日々の生活の中で、何を意識改革として制限していくのか決めるのは困難で、当分はそういう法律的な制限は実行されないだろうなと思いました。」

 

第24回(2019年10月18日 12:00–14:00)

発表者:岡田(M1)「消費税がすごい」

座長:鎌田 参加者,大桑、浅井、酒井

概要:消費税(付加価値税)は20世紀半ばに生まれ,現在世界の多くの国で導入されている税制です.日本は今年10月1日にその標準税率を10%に引き上げ,同時に一部の消費に対して軽減税率を導入しました.この機会に,今や当たり前のものとなった日本の消費税について考え,将来の問題や財政のあり方について議論しました.

主な議論点:

- 何のための増税か.増税分は何に使われるのか?

- 他の税ではなく,なぜ消費税が重要なのか?

- 日本の財政上の問題をどうするか.

- 日本の高等教育の予算について.

学生の感想要点まとめ↓

「今だけを考えるならば低い方が良いけれど,未来を思うならば増税するべきだと感じました.日本がヨーロッパに比べてかなり税率が低いことを見ると,このままでは日本の将来が不安です. 」

「税金であらゆる社会保障を充実させてほしいですが,国債の問題があるので自分の思っているほど簡単な問題ではないと思いました.僕も真剣に考えなければならない問題だと改めて認識しました. 」

「政府は政権が崩れることを恐れ,国民から反感を買わないように少しずつしか消費税を上げれない状態にありますが,今回のような説明を国民に分かりやすく伝えていけば解決の方向に進んでいくのではないかと思いまし た.(中略)大学などの高等教育への予算が少ないという話は悲しい事実だと思いました.教育が充実した他の国みたいに日本ももう少し教育費に割り当ててほしいと思います.」

「消費税が上がったことに対して「なぜ他の税ではなく消費税なのか?」というのは疑問でした。しかし、グローバル企業が経済活動を行う現代において、国籍にかかわらず国内の付加価値をもとにして確実に徴収できるという、間接税ならではの大きなメリットの存在を意識できました。」

「国が借金を抱えているから増税するといったところで批判する人は必ずいる.国民からの支持を集めたい政治家・評論家などが増税する必要はないなどの意見を言うと,増税は嫌だと感じている国民がその意見に強く賛同する.(中略)自然と税金を払う仕組み作りが急務であると私は思った. 」

 

第23回(2019年8月8日 12:00–14:00)

発表者:田村(M1)「フードデリバリーがすごい」

座長:岡田(M1),参加者:奈良岡(M2),野村(M1),若林(M1),Taimeng (visitor from Boston)

概要:Uber Eats に代表されるオンラインフードデリバリーとは,一般の人が配達パートナーとなり,注文者とお店を繋ぐ新しい料理宅配サービスです.このサービスによって,これまで宅配サービスのなかったレストランからも料理を宅配してもらえることから注文者はデリバリーしてもらえる料理の選択肢が増える,配達パートナーは空き時間に副業としてお金を稼げる,お店は少ないコストで宅配サービスを始められる,といったメリットが生まれました.この話題を田村さんが提供し,以下について議論しました:

1. UberEats 等の利用者はどのような人がいるか

2. フードデリバリーによって食事が画一化・効率化されると,家庭や地域の食事文化が廃れないか.

3. 一般人をサービスに組み込む UberEatsの仕組みを他のサービスや分野に活かせないか

4. 効率化は大切である一方,非効率的なものの品質や所作に美意識を見出すこともある.だとすれば,効率化のみを追いかける社会は本当に理想的だろうか.

 

 

 

第22回(2019年5月23日 12:00–14:00)

発表者:多田 (M2)「アシストスーツがすごい」

座長:奈良岡(M2)、参加者:水野(M2)、ivven(M1)

概要:靴,車,新幹線など,自分の能力を拡大する科学技術は進歩し続けています.体の電気信号を読み

   取り動きを補助するアシストスーツもその1つで,農作業や建設業などに導入され始めています.

  ますます普及が広まるアシストスーツの話題を多田さんが提供し,以下について議論しました:

1. アシストスーツの普及に,化学者はどのように貢献できるか.機能改良,低コスト化.

2. アシストスーツの普及により社会にどのような影響がもたらされるか.

 

 

学生からのコメント:

「...アシストスーツは人間の動作を幇助するものであり、介護現場や肉体労働が必要とされる現場での活躍が期待されています。さらに要介護者が着用することで老人が尊厳を持って健康に生きられる期間が長くなり、若い人材が介護職に就く必要がなくなるため、人材不足の軽減にも繋がるのではないかと考えられます。その一方で、多くの科学技術の発展が人々の生活を豊かにしてきたのと同時に、新たな問題を生み出してきてしまったように、アシストスーツにも弊害があることが予想されます。...(中略)...急激な変化に対応する枠組みづくりと利用する一人ひとりが持つ倫理観が非常に大切になってくると考えられます。また、化学者としてどのような問題が予想され、解決するためにどのようにアプローチできるか常に考える必要があります。」

「...自分の子供たちが豊かな生活を送ることができるように負担をさせないように、根本的な問題と目的を見失わず、努力していければと思いました。それが恩恵を与えてくださった親世代への一番の恩返しなのではないかと思います。」

「 ...although the assist suits can help people in agriculture, can help the old or the female reduce the work, it could also have a negative effect on the young people, they may use the suits and reduce their work which is not good for the young, they should learn how to self-help. ... I learned that I should also consider the problem about the bad sides not just the good sides, and I also should notice that science is helping people a lot but we shouldn’t take it for granted. 」

「新しい発明がなされると今までになかった問題点が必ず浮上し、その問題点を見通す力が必要だということを強く思った。それと同時に、複数の人と議論することで自分が今までに見えてこなかった課題や解決策が意外と簡単に見つかるということも、今回の昼食会を通して気がついた。野依先生は、統計と当事者は異なるということを仰っていてその通りだなとハッとさせられた。自分は今まで、統計の中の少数派の人のことを多く見過ごしてきたのではないかと思った。また、社会の期待の正当性をきちんと確認しなければならないというお話も強く印象に残った。当たり前だと思っていることを今一度確認する良い機会となった。」

「...リスクとベネフィットのバランスが大事であるという野依先生のお言葉に非常に納得させられました。ある1つの物事に対して多角的な視点から考えること、また、様々な未来を予測することが大事であると実感しました。...(中略)...早い段階から「どういう社会にしたいか」をしっかりと考えることが重要であると思いました。」

 

第21回(2019年2月18日 12:00–14:00)

発表者:水野(M1)「将棋ソフトがすごい」

座長:齋藤(M2)、参加者:小林(M2)、坂野(M2)、Grømer(M1)、岡田(B4)

概要:将棋の対戦や対局内容を検討する将棋ソフトは, 現在パソコンやスマートフォンでプロ•アマ問わず

   多くの棋士が利用しています. その実力はトップ棋士を上回るものであり, 将棋ソフトを活用した

   新たな戦法の開発も期待されます. この話題を水野さんが紹介し, 以下の点について議論しました:

   1. 人工知能(AI)の発展に伴い、私たちはAIとどのように共存していくべきか.

   2. AIと人間のそれぞれの得意分野, 役割は何か.

   3. 人との会話方法について(直接的な会話とSNS等インターネットを介した間接的な会話との比較).

 

 

学生からのコメント:

「規則が成り立つ物事においては、もはや人間はAIに勝つことができない時代になったことを知りました。そのような時代を生きていくにあたり、私たちはAIを活用しながらもAIには成し得ないことをしていく必要があると思いました。」

「私はAIが人間を破るかどうか、というよりもAIという道具を手にいれたことで人間の中での競争がどういう風に変化するかということが重要になってくるかなと思いました。」

「現在、対戦相手を勝たせてあげるように将棋を指す“接待将棋”はコンピュータには難しいとされているそうです。それなので、まだまだ人間の“人間らしさ”が生かされる場面は沢山あると思います。」

「特に印象に残った点は、「ルールが決まっていることについて、人間は機械には勝てない」ということです。...(中略)... では、人間とは何なのかを考えた時、「機械は間違えないが人間は間違える」と野依先生がおっしゃったことが一つの考え方なのだと思いました。最近では、有機合成や生理活性物質のターゲット探索にもAIが使われています。確かに迅速で効率の良い方法かもしれませんが、化学の歴史を振り返ってみると、「間違い」から新たな発想や発見が生まれてきたとも思います。...(中略)... AIに使われるのではなく、正しく使う知識を身につける必要があると思いました。」

 

第20回(2018年11月22日 12:00–14:00)

発表者:大桑 (M1)「MaaS がすごい」

座長:齋藤(M2)、参加者:田村(B4)、若林(B4)

概要:2018年1月にトヨタ自動車が電動化・コネクティッド・自動運転技術を活用した MaaS(Mobility

   as a Service)専用の次世代電気自動車(EV) “e-Palette Concept ”を発表しました. 移動や物流,

   物販など様々なサービスを担う次世代のモビリティの手段としての活用が期待されています.

   この話題を大桑さんが紹介し,以下の点について議論しました.

   1. どこの,誰のための MaaS か?

   2. Maas の手段として EV を使うことのメリットはなにか.

   3. EVの中の限られた空間で多様なニーズにどう対応できるのか.

   4. 自分たち若者は将来どのような社会の中で暮らしていきたいのか.

     便利で効率的な社会を本当に望んでいるのか.移動時間をも消費活動に使うことは幸せか.

 

 

第19回(2018年8月3日 12:00–14:00)

発表者:奈良岡(M1)「音楽の力がすごい」

座長:多田(M1)、参加者:吉岡(D1)、鎌田(M2)

概要:電子機器の発達やインターネットの普及によって,音楽は私たちにより身近な存在となりました.

   音楽を効果的に聴くことで,私たちは単にリラックスするだけでなく,

   様々な場面で集中力や作業効率を上げることができます.

   この音楽の活用について奈良岡さんが紹介し,以下について議論しました.

   1. 「音楽を聴く」行為は受動的で,「楽器を演奏する」行為は能動的である.

     それらが人間に及ぼす違いは何だろうか.

   2. 機械によって大量にコピーされた音楽と,人間が創り出す音楽の違いは何だろう.

   3. 音楽と科学は密接な関係がある.音楽を科学に活用することはできないだろうか.

 

 

第18回(2018年5月18日 12:00–14:00)

発表者:小林(M2) 「コンビニがすごい」

座長:齋藤(M2),参加者:森(M2),水野(M1),岡田(B4)

概要:現在,日本には約5万6千店舗のコンビニエンスストアがあります.最近,少子高齢化や客数低迷

   から,無人コンビニやジム併設型コンビニなどが現れ,コンビニに変化が見られ始めました.

   この話題を小林さんが提供し, 以下について議論しました:

   1. コンビニは多様化する一方で,私たちの生活は画一化されていないか.

   2. 画一化されるとアイデンティティが失われる.個人は独自の価値観を保てるか.

   3. 便利になったこと「時間」が生まれる.この時間を何に使いたいのか,どう生きたいのか.

    時間をどう使うか,自分で決められているか.

 

 

第17回(2018年1月26日 12:00- 14:00)

発表者:齋藤(M1)「ブランド米がすごい」

座長:坂野(M1),参加者:永田(M2),多田(B4)

概要:コメの国内需要は年々減少しているのに対し,ブランド米の銘柄数は増加傾向にあります.

   コメを巡る競争を勝ち抜くために,現代日本の需要に合った「冷めても美味しいお米」のような

   ユニークなブランド米が開発されています.この話題を齋藤さんが紹介し,以下について議論

   しました:

   1. より良いコメを生産するには科学の力が必要である.

   2. 海外に日本のコメを輸出し,新たな市場を開拓するにはどうすれば良いか.

     コメだけを輸出するのではなく,料理(日本の食文化や技術)と共に輸出する必要がある.

   3. 味覚の数値化は重要な研究テーマだろう.

   4. 科学技術をうまく使えば新しい芸術が生まれる(参考:東京藝大COI での取り組み).

 

第1回–第16回 はこちら

 

文責:中

THE NOYORI LABORATORY | 野依特別研究室 名古屋大学 大学院理学研究科 野依特別研究室 / 名古屋大学 物質科学国際研究センター 分子触媒研究分野 〒464-8602 名古屋市千種区不老町 名古屋大学 野依記念物質科学研究館 http://noy.chem.nagoya-u.ac.jp/

Language: